路傍のひと

見学者-001-『路傍のひと』

2001年4月18日(木)〜22(日)
王子小劇場

作・演出:黒沼佰見
制作・演出:倉光仁美

舞台監督:小金井伸一
照明:永井良
音響:児玉拓己
舞台美術:鎌田朋子

出演:蔵田→杉田健治
    谷沢→山本義明
    小針→岡部由美
    湯浅→大崎啓文
    柴山→倉光仁美
    大塚→神野剛志
    都築→喜多忍
    春江→鈴木万裕子
    夏子→副島千尋

  海の見える小さな町だった。その町の路地を通る人びとがいる。路地に停められた自転車の籠にはゴミが捨てられている。そして、路地に面した空地には彫刻のようなもの。それはよく見れば、粗大ゴミ。
  その空地を何とか売り飛ばそうと考えている不動産屋、そしてそれに振り回されるのはいつも決まって工事の男だ。公園にする予定だった空地も駄目になり、何としてでも売り飛ばしたいのは、その土地が本当は彼のものではないからだ。
  Web上で開催されているチャット「第四会議室」で出会った四人は、フリーマーケットをすることになっていたが、なかなか出会えない。それぞれの四人は翌週ようやく出会えたが、どうも様子がおかしい。誰かが誰かになりすましていたかもしれない。それが誰なのかわからない。
  さらにこの町に最近引っ越してきたのは、両親に捨てられたことになっている姉妹だった。両親を探すことに必死かに見えたが、実際は家出をしてきた姉妹だった。妹の夏子は、家出した先からもう一度家出をし、姉の春江は妹の夏子を必死に探す。
  関係ないはずだった会社員の蔵田が三つの話に巻き込まれ、とんでもない結末へと向かってゆく。


ネットで出会う人びと①。左奥、岡部由美。手前、山本義明。


不動産屋と工事現場の男。左から、喜多忍、神野剛志、座り込んでいるのは山本義明、岡部由美。


捨てられた姉妹と会社員。左から杉田健治、副島千尋、鈴木万裕子。


ネットで出会う人びと2。左から、倉光仁美、大崎啓文、喜多忍、神野剛志。


たった一人のフリーマーケット。左から杉田健治、副島千尋、山本義明。


妹を探す姉。手前左から鈴木万裕子、杉田健治、奥左から喜多忍、神野剛志。


ネットの四人。左から山本義明、倉光仁美、大崎啓文、岡部由美。


存在論的亡霊。左から副島千尋、杉田健治。


エピローグ。左から副島千尋、鈴木万裕子、大崎啓文。

  見学者と名称変更して第一弾のこの作品は、鬼に金棒!時代の作品をすべて寄せ集め、構造もそれぞれから引用した形になったんじゃないかと。インターネットでの出会い。引きこもり、工事の男。兄弟とか姉妹とか。芝生。などなど。そういう意味では、かなり保守的な作品。というか、「見学者初心者向け」という気持ちがどこかにあったのかもしれない。で、今回戯曲の段階ではわりとわかりやすい作品を心掛けていたのだけれど、やはりラストで全部を語るのは抵抗があった。考えてもらわなければ意味がない。
  そして、「第三の新人シリーズ第一弾」とわたしは勝手に呼んでいる。吉行淳之介氏の作品からモチーフをかなり頂いたから。つまり…、そうなると第二弾もあるわけで…。