見学者-002-『別の岬』
2001年12月7日(金)〜9(日)中野テルプシコール
作・舞台美術・舞台監督:黒沼佰見
演出・制作・衣装:倉光仁美
照明:高田麗
音響:小山舞衣
出演:
畠川慶 → 大崎啓文
姉 → 中山静子
別の女・掃除婦 → 片山栄子
ターバン・人夫 → 西原誠吾
漁師・電気屋 → 黒沼佰見
保健所職員・マスター → 十枝大介
老婆・こども → 菊池美里
女教師・看護婦 → 鈴木万裕子
警備係・医師 → 杉田健治
ひとりの男が「別れ岬」と呼ばれる岬にやってきた。この町の病院に入院する母を見舞うためだ。この町で彼を待っていたのは、ずっと母の看病をしつづけてきた姉だけではなかった。この町に住む人びとは、外から入ってくる人間に警戒心を抱いている。それも無理がないのは、その「別れ岬」が自殺で有名な場所だからだ。この町の人口の17%は自殺未遂に終わりこの町に住み着くことになった者たち。
しかし、彼はただ母親を見舞いに来ただけ。その男の名は畠川慶。
町の人間に盥回しにされ、なかなか病院に辿り着けぬまま、一日が過ぎ、ようやく辿り着いた病院でも、町で聞いた噂や伝説にその姉弟は翻弄され続け、疲れ果てた男は夢を見る。
人との出会い、そして死という別れ。それらを通して、畠川慶は本来の目的である母の死を受け止めることになるのだった。
姉に興味を抱く漁師。左から黒沼佰見、鈴木万裕子、中山静子。
ゲームをしながら話す警備係と別の女。左から杉田健治、片山栄子。
一晩中、ターバンに着いて歩いて来た慶。左から大崎啓文、西原誠吾。
年に一度のカーニバル。
踊りに誘う別の女。奥左から大崎啓文、片山栄子。
手前左から鈴木万裕子、菊池美里、西原誠吾。(推定)
奥左から杉田健治、黒沼佰見、大崎啓文。(推定)
公演合間に一息。左から大崎啓文、杉田健治、西原誠吾。
見学者と名称変更して第二弾のこの作品は、わたしの中ではかなり実験的な作品。ただ、それでも「わからなかった」というアンケートが極端に減ってきているのは、わたし自身の戯曲の書き方が変わってきているということだろうか。演出のスタイルも細かなシーンごとにコンセプトを決め、今までのスタイルの丁寧さや細かさよりも、力強さや猥雑さを強調することに専念した。そういった意味での伝わりやすさは大きかったのかもしれない。
そして、この作品は「第三の新人シリーズ第二弾」とわたしは勝手に呼んでいる。安岡章太郎氏の作品『海辺の叙景』からモチーフを頂いたから。ただ、他にもつげ義春氏の『海辺の光景』、F=カフカ『城』、中上健次氏『岬』、サミュエル=ベケット『クラップ最後のテープ』など多くの作品から引用、あるいは参考にした。とにかく雑煮のような作品にしたかった。いろんなものが混ざっていて、それをひとつの味に整える。そんな感じ。
舞台装置の岬は手作り。他の部分はすべてパイプ枕の中身が敷き詰められていた。このパイプ。128kgで8箱買ったが、箱を開けて使ったのは4箱半分だけだった。そういうこともある。役者はみんな随分苦労しただろうと思うが、わたしも苦労した。そういう意味でも五分五分である。