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「中国・上海/ホテル篇」
●ホテル到着 当初、ネットで予約したホテルはADSL対応で、「シティホテル」という名前だった。しかし、予約でいっぱいになってしまったのでダイヤルアップ接続ですがこんなところはいかがでしょうと薦められたのがそのホテルだった。 ローソンや、おしゃれな感じを漂わせるカフェバーのある大通りから脇道に入りいよいよ我々が泊まるホテルに到着。アンティークな洋館風の建物といえば聞こえはいいが「出る」感じを漂わせるホテルだ。玄関の前のひさしを支える柱二本だけだが金色。他は灰色。あとで何となくわかったのだが、12月ということで、クリスマス用に飾り付けしていたつもりなのだろうけど、それ以外の装飾はなく、ありがたい感じさえする。金色堂か、ここは。 小さなフロントでチェックインする。「ちょっと待って」で、かなり待たされ、あげくにフロントは流暢な英語を喋る。「I am...」を「我(ウォ)am...」とうっかり混同してなお気づかないこともある我々の脳は、英語に対してすべて中国語で答える。コントだ。 フロントの男は、「保証金を2,000元(日本円で30,000円弱)いただきます」と言う。2泊で1,500元あれば十分お釣りが出るというのに、どうしてそんなに取る?と、それでも時折英語を差し挟むホテルマンに突っ込んで聞くこともできず、追い打ちをかけるように「現金とクレジットカードどちらになさいますか?」に対して、中国ではクレジットカードは持ち歩かないことが我々の鉄則であるから、「現金」でと答えてみたものの財布の中には二人合わせて1,500元しかないことに気が付き、恥を承知の上で「お金おろしてきたいんだけど、キャッシュディスペンサーはどこ?」と尋ねれば、「裏のホテルにあります」。 再び、雨のそぼ降るなか、裏のホテルへ歩く。裏のホテルは、私たちの泊まるホテルよりずっと大きなビルで玄関前に行くまでホテルだとは気づかないくらい大きな建物だった。 ●裏ホテル 裏のホテルはヒルトンだった。裏と表、主体と客体が逆転している。ロビーに入ると、豪華を絵にしたような光景で、と、一言で言ってしまえば容易いが、なにしろいちいち装飾が目に五月蠅い。床も半螺旋を描く階段もカウンターも円柱も大理石。そこここにアイビーなんかが這い、クリスマスリースが至る所にぶら下がっていた。ような気がする。ソファに埋もれた人々、いろんな航空会社のいろんな人種の乗務員、いろんな人種の観光客。大理石と人に酔った。一番奥のカウンターまで歩いては行ったが、さて何の用だったかとぼんやりさせるほど、ロビーは広かった。 ここはやはり「コンシェルジュ」と呼ばれる人に尋ねるべきかとロビーを見渡し、先ほど入って来た玄関脇にそれを見つけ再びロビーを横切った。コンシェルジュは、「さあ、なんなりとどうぞ」といわんばかりにこちらを向き直り、銀行のキャッシュディスペンサーはどこか?と問えば、ドアマンに案内させるよううながした。それは、玄関のすぐ脇ーコンシェルジュと反対側のーにあった。わざわざ広いロビーを往復することもなかった。玄関を入って回れ左をすれば、難無く見つけられたはずだった。 キャッシュディスペンサーにカードを差し込む。1回に引出可能な金額は最高1,000元。1日5回までと制限があるようなことが機械の横に長々と書いてあった。大連の空港で今日1回目の引出は済ませた。残るは、あと4回 。迷わず1,000元引き出しと入力すると、「お取り扱い限度額を超えています」と出た。「どういうことだ?」「どういうことだ?」とあたふたしてみたりして、とりあえず500 元。出た。再度500元。出た。じゃあ、900元は?出た。つまり、引出可能なのは1,000元「未満」であったことに気が付く。長々と書かれた説明をよく読むと、100元札のみお取り扱い可能とある。ってことは、900元までしか出せないんじゃないか。紛らわしい表記に舌打ち。気が付くのがすこし遅すぎたようだ。今日の引出可能な回数は、あと1回となった。キリがいいとこで「じゃあ、600元」。 膨らんだ財布を手に、外へ出る。財布が膨らむというのは悪い気はしない。お札が35枚も入っていれば、二つ折りの財布は折れ曲がるのを拒絶しはじめる。お金持ちが持つ財布は長財布と決まっているのは納得できることだ。5万円弱でこんなにふくよかな財布に出会えるとはすごいことだ。 ●ようやくチェックイン 裏のホテルに戻り、保証金2,000元を支払う。カードキーをもらって、ベルボーイに連れられ、部屋へと案内される。部屋は6階。エレベーターのすぐそば。非常口も確認。部屋に入ると、セミダブルのベッドが二つ。それと向かい合わせに鏡台とテレビ。バスルームに入ると、変なデジャヴ感。何かの映画のシーンだったかもしれない。まあ、海外にありがちなホテルのバスルームということか。 ベルボーイに、ネットには繋げるのかどうか尋ねると、「できます」と言う。じゃあ、電話に繋がったこの線を繋げばいいのかと尋ねると、彼は「できません」とだけ言い残し、呼び止めるすきも与えずさっさと出て行った。 取り残されたなあと私が立ちつくしている間に、早速連れはノートパソコンを取り出している。連れのことは相手にせず、トランクのスーツやらをクローゼットに掛けることにした。クローゼットには当然のことながら浴衣ではなく、バスローブが、しかもやたら長いやつが入っていた。他のサイズはないのか。殿中でござる、でござる。 パソコンを起動させた連れが「無線LANが入ってる」と声を上げた。そんなはずはないと画面をのぞき込むと、無線LANのターミナルがあることを表示している。電波もかなり強い。そのターミナルを利用してネットに繋いでみた。一瞬、オフラインでは見られないサイトを読み込んだが、すぐにパスワードを要求する画面に切り替わった。ぬかよろこびさせられた。おおかた裏のホテルの無線LANの電波がここまで飛んできているのだろうと肩を落とした。ダイヤルアップ接続するには、その地域のプロバイダが発行するプリペイドカードを買えばいい。プリペイドカードは街のいたるところで売っているので街歩きの途中にでも買えばいい。国土が広いゆえのサービスだと思うが、そういったサービスは日本ではないはずだと思うからで、あるんだったら「あるよ」と、どなたか教えていただきたい。 ●終日サービス 付近を散歩して帰ってくると、何者かが侵入した形跡がある。私物の場所が移動しているとかそういった明らかな違いではなく、何かが違う。室内をじっくり見渡して気づいた。灰皿にあった吸い殻がない。捨ててあったはずの石けんの包み紙もない。ルームクリーニングが入ったのだ。出かける前にノートパソコンを引出の中にしまっておいてよかった。目に付くところに置いてあれば、持って行かれると思っていなければ、痛い目に遭う。それが異国の地だ。そうでないにしても、用心するに越したことはない。 日本にいては見ることのできないNHKWorldの番組「海外安全情報」では、毎日そういった注意をうながしている。余談だが、あの番組は海外だけでなく日本で出発前にこそ見る必要があるのではないかと常々思う。きっと海外のホテルでNHKが見ることができたのかと気づいたときには、「すられちゃった」とか「ぼられちゃった」ということが多々あるのではないかと思うからだ。 鏡台の引き出しに入っていたホテルのサービスの内容(日本語)を確認すると、「当ホテルでは24時間ルームクリーニングのサービスがございます」とある。細やかな仕事だなと感心してはいけない。裏をかえせば「24時間、すきあらば入りますよ」という宣言である。部屋の水道水は沸かしても飲めないので、飲料水の補充をいつでもやりますということらしいが、だったら、人がいるときに届けてくれた方がまだいいような気がする。うっかりすると、寝ている間に入ってきて片付けていくかもしれない。部屋にいるときはチェーンを掛け、出かけるときは「起こさないで下さい」のカードを廊下側にぶら下げるよう、連れと申し合わせた。 その日の夜はベッドに入っても、ルームクリーニングがいつチェーンのかかったドアを「ガシーン」と開けるかわからない恐怖におびえてなかなか寝付けなかった。朝は朝で早くから、廊下でルームクリーニングのおばちゃん達の声も聞こえる。聞こえるという程度ではない。うるさいのだ。我々を起こしに来たのかと思った。ベッドルームから直で廊下という部屋の作りのせいもあるから、かなりはっきり声が聞こえる。廊下のあっちとこっちで話をしなくてもいいじゃないか。 |