「札幌・大通り公園篇」


大通り公園を歩く

■札幌駅■
  札幌市内にあるビジネスホテルを出るとあまりにも天気がいいので、まずは「札幌テレビ搭」を見ようと大通り公園に向かうことにする。札幌の街は縦と横の直線道路が碁盤の目上に構成されている。札幌駅からまっすぐに駅前通りを南に行けば大通り公園にぶつかり、大通り公園の最も東に位置するテレビ搭からそう遠くはないはずだ。
  で、ホテルを出た道をまっすぐに進んだ。
  しかし、いつまで経ってもそれらしい通りにはぶつからない。それもそのはずだ。わたしが泊まっている場所は札幌駅ではない。そこから南に下って、すこし左に入った道にあるビジネスホテルだ。つまり、わたしはひたすらテレビ搭とは正反対の方向に進んでいた。
  見学者としてはどうかと思うほど方向音痴なわたしだが、札幌は大丈夫だろうと安心していたのが裏目に出た。
  結局、かなり遠回りをして大通り公園の最も西に位置する場所へ着く。
■『ブラック・スライド・マントラ』■
  というわけで、大通り公園をとにかく歩いてみることにした。何しろ天気もいいから公園を散歩するには絶好の日だ。平日の昼間、この大通り公園はそれほど賑わっているわけではない。観光する人も多くない。二月には「雪まつり」がここで行われるから、それはもう大変な人の数だろうけれど。
  前日に見つけた札幌市内の地図を参照すると、世界の美術家イサム・ノグチの作品があるという。それがこの『ブラック・スライド・マントラ』。すべり台だという。しかし、冬季期間中はすべれないように柵がある。そもそもご覧のように雪が積もってすべれない。
■自動ドアのあるトイレ■
  温度がマイナスの世界を歩いていると、トイレがどうしても近くなる。
  で、トイレに入ろうとして驚いた。自動ドアである。中に入るとしっかり暖かい。暖房がついている。確かにマイナス何十度という世界で小便をすれば、たちまち凍ってしまうだろう。
■埋められた自転車■
  すっきりして、のんびりと歩く。
  ちょっとした建物の脇に停められている自転車だが、すっかり雪に埋もれている。よく見ればサドルがないじゃないか。どうやら放置された自転車のようだ。こうした駄目な自転車は街に溢れている。わたしはそれが好きだが、これにはより一層の哀愁が感じられた。雪に埋もれていると、捨てられているものもより「捨てられている」ように感じる。
  そんな大通り公園を歩いていく。
  すると目の前にそれは現れた。

札幌テレビ搭に登る

■札幌テレビ搭と浮浪者■
  札幌テレビ搭だ。しかも、それだけじゃない。写真右下をよく見るとわかっていただけると思うが、浮浪者が立小便をしているのだ。驚いた。そして、しっかりとはカメラを構えず、胸の辺りに構え、構図も確認せずシャッターを切った。ファインダーを覗き込んで見学できるような光景ではなかった。しかし、これが現実である。
  さっきのトイレに行けばいいじゃないかと思った。どうせ暇なんだから。いや、言い方がよくないな。時間はいくらでもあるだろうから。
  これもまた「雪の中に捨てられたもの」である。
  つまり、わたしは好きなのだ。だから、撮らずにはいられなかった。できることなら、彼の住居まで見学したかったが、そこまで立ち入ることは見学者の仕事ではない。
  生活自体はかなり厳しいものだろうと容易に想像できる。東京の浮浪者でも冬には死人が出るのだから。札幌ならばなおさらだ。それとも札幌の浮浪者は何かが違うだろうか。
  まあ、それはいい。目的は目の前のテレビ搭だ。
  テレビ搭の真下まで着くと、とりあえず何時まで展望室が開いているのか確認した。今日の予定は「小樽」に行くことだ。テレビ搭のなかをゆっくり見学している時間はない。
■テレビ搭からの夜景(大通り公園)
  夜、再び札幌に戻ってきたわたしはテレビ搭に急いだ。閉搭まで三十分もない。すぐに入れるだろうと考えていたが、甘かった。大通り公園自体、昼間の静けさとかけ離れた華やかさである。
  入搭料を支払い、まずはエレベーターで三階までのぼる。そこで降ろされると、係員の女性が「まっすぐ行って突き当りを右に行ってください」と誘導する。そこで大勢の人が並んでいるのだ。列の最後尾につき十五分ほど並んだだろうか。
  ようやく地上90.38メートルの展望室へ。
  みんな、この夜景を見るためにこの札幌テレビ搭にのぼっているようだった。時間もないので、ぶらりと展望室を一周。土産物屋でお決まりのテレビ搭キーホルダーを購入しようと思ったが、もうレジをしめていた。ほかにもイニシャルを入れられるという記念メダルの自販機やら、占いの機械やら、一昔も二昔も前に作られたであろうものが目をひく。
>■閉搭直後のテレビ搭
  十分ほど見学したところで閉搭。時間は夜の10時。土産物も諦めて降りる。
  この電光時計は、サイズが8×10メートル。発光ダイオードを使用しているらしい。
  電飾で飾られていたテレビ搭も閉搭十分後には電飾が一気に消えた。それを背景に写真を撮ろうとしていた観光客たちの間から「ああ…」と落胆の声が聞こえた。


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