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ハロルド=ピンター

ありがとうピンター

 ハロルド・ピンターさん78歳(英劇作家、ノーベル文学賞受賞者)英メディアによると、24日に死去した。妻で作家のアントニア・フレーザーさんが明らかにした。数年前からがんを患っていたという。

 1930年、ロンドンでユダヤ系の洋服仕立屋の家庭に生まれた。演劇学校で学んだ後、舞台俳優として活動しながら詩や小説を執筆。57年に初めての戯曲「部屋」を発表、他に「バースデイ・パーティー」(58年)「管理人」(60年)「誰もいない国」(75年)などの作品があり、日本でも上演されている。05年にノーベル文学賞を受賞した。

 現実のとらえ難さを描く不条理劇の手法を確立し「20世紀後半英国の最も偉大な劇作家」と呼ばれた。ノーベル文学賞の授賞理由では「日常の何気ない会話の奥にある危うさを暴露し、抑圧された物事の本質に迫った」と評価された。反戦活動家としても知られ、病気で欠席したノーベル賞授賞式での録画演説でイラク戦争(03年)を巡る米英の対応を激しく非難した。【欧州総局】

●ピンターが亡くなった。
●もう一度、ピンターの戯曲や映像台本、エッセイも含め、読み返そう。

ピンターの言葉から

●ハロルド=ピンターのノーベル賞受賞のスピーチを読んで、改めて政治の、あるいはアメリカ的姿勢(それを許容する日本の姿勢も含めた)が100年後、200年後、未来の人たちにどのように評価されているのか、考えさせられた。
 芝居をつくることも、映像作品をつくることも、あるいは文章を書くことも、きっとどうしようもなく進んでしまうこの政治や経済からなる「嘘のタペストリー」の中で、どうにかして抗おうとする行為なのだと再確認する。
 「真実などどこにもなく、ただ真実とされることがあるだけだ」と以前、わたしはどこかに書いたが、そこで単なるニヒリズムに陥らないためには、だからこそその真実とされることの根拠を疑うことも忘れるわけにはいかず、ただ愚鈍に「ないはずの真実」を求めようとするしかない。
●企業のコンプライアンスの問題が注目されていることや「中国食品株式会社」という名前だけで倒産してしまう日本の会社のこと、あるいは、安部政権が選ばれてしまったこと。
 海外で続く戦争のこと。そのはじまりのこと。いつのまにかそうなってしまっているということ。こうしたことをより具体的に考えて、作品化していくことになるのかもしれない。

どうやってそれを捉えるか

●4歳になったばかりの甥っ子からの携帯メールが凄い。
 最近の携帯電話の変換予測機能が文章を作成する能力を低下させていると何かのテレビ番組で言っていたが、それとは別に新たな可能性さえ持っているのではないか。もちろん、本人は意味など分かっていないのだが、妙に語感が心地よかったりする。
 これはまさしくエクリチュール・オート以外の何ものでもない。
●ハロルド=ピンターの『何も起こりはしなかった−劇の言葉、政治の言葉』が非常に面白い。
 最初の「ノーベル文学賞受賞記念講演」のなかで、「自分の戯曲がどんなふうにして生まれるのか?」という質問に対して、「ある文、ある単語、あるイメージから生まれている」と答えている。
 さらに、『昔の日々』などの戯曲が生まれる瞬間を細かく説明してくれているが、まさしくそのようにしてしかその世界を捉えることはできないのではないか。映画にとっても、それは同じように松本俊夫『映像の発見−アヴァンギャルドとドキュメンタリー』にも、実はそれに通ずる「事実(アクション)の映画」ではなく「存在の映画」に対するアプローチが書かれている。これがまた非常に面白い。
 この二冊の間をしばらくは行ったり来たりすることになりそうだ。

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