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市場原理とものづくり

●昨日の日記の続きだが、これは経済の社会にも同じことが言えるし、先日浅草で杉田さんが話してくれた芸能事務所と経済のバランスも同じことだ。つまり、芝居に味があるとか、こういう動きができるから面白いとかいう経済的に不合理な考え方は、「金」にするための芸能の世界では徹底的はじかれる。いわゆる「商品としてのスター」がいれば面白くなくても作るのだ。それが市場原理主義(いみじくも自民党のマニフェストが仮想敵として挙げたもの)。
 だからこそ、見学者は「損得」ではなく、やりたいことをやらせてもらっている。あるいは、経済的な「特」にはならないが、人間が生きていく上において必要なことを考える。もちろん、物事はそんなに単純ではない。
●芝居をプロデュースするという視点で考えたときに、あるいはこの劇団は何がしたいんだという視点で考えるとき、いろいろなフレームがあるだろう。
 1,手段はどうあれ、市場経済の論理に乗せることが最終目的である。
 2,経済の論理(ニーズに合わせて)に乗せた上で、つくりたいものを少しでも入れる。
 3,つくりたいものをつくった上で、結果として市場経済の論理に乗る。あるいはニーズを生み出す。
 4,最初から経済の論理を捨てた上で、つくりたいものをつくる。
 これらが複雑に絡み合っているが、それを踏まえた上で、その芝居があるいは劇団の表現が成功しているのか、失敗しているのかは初めて語ることができる。
 たとえば、野木さんのパラドックス定数などは、ある種の特殊性を濃密な空間を溢れ出る言葉の洪水で埋め尽くすことで、それがそのまま特殊性となり、結果的に経済の論理の上にも乗る形ができると思う。求められた条件の上で最適解としての台本を書くという彼女の職人性というか、そういう資質的なものも強く影響しているだろう。あるいは直接会っていないが同じく劇作コース後輩ではすでに商業ベースの舞台を黙々と書き続けている者もいる。それもまた同じく職人性だろう。つまり、求められるものが作れるかどうか。求められるものを作ることに喜びを感じられるかどうかだ。
●見学者では4の立場をとってきたわけだし、「ライフワーク」という言葉が便利だから今は使っているが、結局、ここで作ること、あるいは書くことは根源的に生きることそのものだと言ってもいい。もちろん、しかし、単なる垂れ流しでいいと思っていない。ただ、いろいろな外的条件や内的条件が重なり合ってわたし自身は職業作家にはなれないし、ならない。そういう立場だからこそ書けることがあるはずだし、その視点でのニーズもあると考える。
●経済の世界は断固としてここにあり、われわれは勤労の義務を果たすことを求められる。しかし、内田樹さんが『下流志向』で書いているように、今の人たちは既に(わたしを含めた団塊ジュニアの世代も)「生産の立場」からではなく、「消費の立場」から入っている。しかし、いわゆる戦中派とか戦後まもなくの世代は確実に「ものを作り、売る」ことが最初にある。だからこそ、そこに断絶があり、相互理解を難しくする壁がある。そこに、ニートという言葉が生まれ、認識が生まれ、存在する。そして、消費が前提となった世界で消費される商品を作ることの難しさを、彼らは最初から気付いている。一方で作ることの喜びを知らない(最初から諦めている)とも言える。かつては3のような立場で何を作っても市場があったから、自ずと作りたいものを作れば市場ができた。いまとなっては市場も溢れ、4のような立場の人間も増え、そこに多様化した極めて小さな市場がいくつもできあがる状況となった。
 ときどき来る営業マンがかなり市場原理主義的な発言を再三わたしに語りかけるが、もうわたしに話しかけないでもらいたいと思う。芝居の世界も商品作りの世界もある意味では同じだ。何しろ、社員も役者も「ものづくりの喜び」を味わうことは非常に重要なのだ。
●いずれにせよ(と、唐突な切り上げ方だが)鍛えなければならない。あらゆる方向から。


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