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地下室の手記5

●少し、数ページだけ飛ばす。まずは早速引用から。

ところで、いったい何のために、俺はこんなに自分を歪めて苦しめていたのかと訊かれるかもしれない。答えーただ、手をこまねいているのがひどく退屈だったからだ。それで、奇妙な行動をしでかしたというわけだ。たしかにそうなのだ。あんた方ももっとよく自分を観察してみるがいい。そうすれば、たしかにそうだということがわかるはずだ。自分で珍事を考え出し、人生を創作したのは、せめて何とかして少しはまともに生きてみたかったからなのだ。何度こんなことがあったろうーそう、たとえば、腹を立てるのだ。それも、これ説いた理由もなく、ただわざと腹を立ててみたのだ。ただ自分をけしかけて何の理由もなくむかっ腹を立てたことは、自分でもわかっているのだが、あまりにも真に迫って自分を追い詰めたあげく、しまいには本気で腹を立ててしまうのだ。どういうものか、俺は一生涯ずっと、この手の妙なことをしでかす衝動に駆られ続け、しまいには自分でもそれを抑えられなくなってしまった。(光文社/古典新訳文庫・ドストエフスキー『地下室の手記』安岡治子訳 P35)

●ここは、まさしく自意識を持てあます状況そのものが描かれている。非常にいい台詞である。
だが、問題は台詞として考えたときに、「あんた方」という言葉が出てくることだ。これをどう処理しようか。


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